ご高齢者のQOL(生活の質)を高めて、認知機能や身体機能の維持・改善を目指す実践的な方法について

皆様、こんにちは。本日は6/17(火)。6月も早くも折り返してしまいましたね。月日が流れる事は本当に早いものです。『早い』と言えば…最近、ブログで身体の各器官の事をお伝えしているせいでしょうか?その点に関する皆様からのご質問が多く寄せられている事には驚きを隠せません。今の時代のSNS等を利用したリアクションの『早さ』にビックリしている今日この頃です。というのも、前回まで各器官の中で、血液の流れる速さの違いについて述べて参りましたが…ご利用者様を支えるご家族様の中に…『最新の脳科学や医学的知見を介護の実践に役立てるための方法を知りたい』という…かなり高度なご質問がございました。つまり、そのご家族様曰く…『ご高齢者のQOL(生活の質)を高めて、認知機能や身体機能の維持・改善を目指す実践的な方法を最新の脳科学や医学的知見を重視しながら…できれば教えてもらえませんか?』というモノでした。
そこで今回は私なりにそれらに関係する知見を確認できたモノを中心に考察してみたいと思います。
① 認知症ケアへの応用(脳科学の知見)
◯パーソン・センタード・ケアと脳の可塑性を重視する。パーソン・センタード・ケアとは…トム・キットウッドと継承者ボブ・ウッズにより、認知症ケア13の物語を事例に提唱され、現在では介護現場で広く扱われる考え方です。具体的には…
•脳の可塑性(神経可塑性)により、高齢者でも適切な刺激によって脳の機能を保つことが可能とされております。
•回想法(リミニッセンス療法):過去の思い出を語ることで前頭葉・海馬を活性化するとされております。
•音楽療法:感情や記憶に関与する脳領域を刺激し、認知機能や気分を改善するとされております。
以上が挙げられます。
◯認知機能を保つ活動
•脳を「ほどよく使う」ことが重要(過負荷は逆効果)で、簡単な計算・パズル・会話など、楽しみながら行えるタスクを日常に取り入れると良いとされております。
② 運動と脳の関係(運動生理学と神経科学)
◯有酸素運動と認知機能を結びつける考え方
•有酸素運動(散歩・軽い体操)は脳由来神経栄養因子(BDNF)を増加させ、認知機能を保護するとされ、特に海馬(記憶を司る脳部位)に良い影響があるとされております。
◯デュアルタスク訓練
•『歩きながらしりとり』『各種の脳トレ体操』などの二重課題訓練は、注意力・実行機能の維持に効果的で、認知症予防プログラムの一環として多くの施設で導入されております。
③ 睡眠と脳・身体の健康(睡眠医学)
◯睡眠の質を高める事を目的とされております。
•深い睡眠中に脳が老廃物(アミロイドβなど)を排出。特にご高齢者の方々の睡眠は浅くなりがちなので、規則正しい生活リズムと朝の光浴が重要とされております。
④ 食事と脳の健康(栄養学)
◯地中海式食事法やMIND食(地中海式食事法とDASH食[高血圧予防・改善を目的とした食事法]を組み合わせた考え方)を重視する。
•魚、ナッツ、葉野菜、ベリー類、オリーブオイルを多く含む(地中海式食事法)食事は…認知症リスクを下げるとされております。
•オメガ3脂肪酸、ビタミンD、ポリフェノールを多く含む食品、特に…青魚(特にサバ、サンマ、イワシ)、くるみ、エゴマ油、亜麻仁油、キノコ類(特に干し椎茸)、緑黄色野菜(特にカボチャ、ピーマン、ブロッコリー)等は…脳に良い影響があるとされております。
⑤ 心のケア(精神医学・心理学)
◯孤独・不安の軽減
•孤独は認知症のリスク要因とされております。故に社会的つながりを持つ事が脳機能向上に役立つとされております。その中でも認知行動療法的なアプローチで「できること」に焦点を当て、自信と意欲を引き出し、社会的繋がりを持つ事に関心を持って頂く事が良いとされております。

以上、本日は日々大変な想いをされておりますご利用者様、そしてそんなご利用者様を毎日必死に支えておられますご家族様のご質問にお応えする形で、『ご高齢者のQOL(生活の質)を高めて、認知機能や身体機能の維持・改善を目指す実践的な方法を最新の脳科学や医学的知見を重視しながら』社会的に評価の高い実践例を取り上げて参りました。『ふじの花』では…毎回のブログの中で…『気付き』と『寄り添い』が重要と述べておりますが、その為にはご利用者様の中に、表面的に現れる事象が何故現れてくるのか?を…指標となるべき科学的な知見に考察を加える事で…皆様に可能な限り解り易くご提供する事を行なっております。1度に実践する事は難しいとは思いますが、主治医の先生とご相談されながらもひとつのご参考にして頂けましたら幸いでございます。