人間関係再構築の考察について…謝罪の本質とは?痛みへの共感とは?他者理解への資源とは?

皆様、こんにちは。本日は10/18(土)。日に日に朝・夕と昼間との寒暖差が身に染みる季節になって参りましたが、如何お過ごしでしょうか?本日はご利用者様を日頃必死にお支えになられているご家族様からのお話を取り上げたいと思います。即ち…ご家族様曰く『仕事の傍ら、父の介護を毎日のように行っていると、体力的にも精神的にも辛く感じ、仕事の面でもその事が頭から離れません。その為、先日仕事で取引先の方に大変なご迷惑をお掛けしてしまい、謝罪を致しました。でも考えれば考えるほど、謝罪をしながらも何故か?自己弁護をしてしまっている自分がいる事に気付きました。私は本当に謝罪をしているのだろうか?と…。』仰られました。この言葉に私は深い感銘を受けると同時に日頃の私の言動の至らなさを深く反省致しました。皆様はどのように感じられますでしょうか?
そこで本日はこの『謝罪の本質』を考察しながらもその先にある学びとは何か?更に謝罪のお相手との関係の築き直し方を脳科学の視点にフォーカスして考えてみたいと思いました。と言うのも…このような、周囲の人には見せたくない面を考察する事が、しいては私が仕事としている介護の本質を考察する事にも繋がると考えたからであります。
先ず…人が謝罪をする場面では、脳の中でまず「扁桃体(へんとうたい)」と呼ばれる部分が活性化すると言われております。扁桃体は、恐怖や不安、羞恥といった“生存に関わる感情”を察知する中枢です。自分の過ちが指摘されると、扁桃体が「危険信号」を出し、同時に前頭前皮質がその感情をどう処理するかを判断します。謝罪の初期段階では、多くの人が「自己防衛反応」を示します。「でも私は悪気がなかった」「誤解ではないか」と言い訳したくなるのは、脳が自己を守るために反射的に作動するからです。しかしこの段階を乗り越え、相手の気持ちに意識を向け始めたとき、脳内で変化が起こります。共感を司る「前帯状皮質」や「島皮質(とうひしつ)」と言われる部分が活動し、他者の痛みを“自分の痛み”として感じ取るようになると言われております。つまり、本当の謝罪とは「防衛脳」から「共感脳」への転換ではないかと私は考えております。脳科学的にも…このときに分泌されるのが「オキシトシン」という神経ホルモン(信頼や絆を深める物質)であり、その「オキシトシン」の媒介によって、誠実な謝罪は、脳の生理学的にも、関係の再構築を促す方向に働くと言われております。
しかしながら頭では解っていても、自分の非を認める事は辛いし、将来にわたって苦い記憶をずっと引き摺らなければならなくなるのではないか?と考えている方が多いのではないでしょうか?ですが…その『苦い記憶』を《痛みを噛み締める記憶》と捉え直し、更に、【学習と再生の回路をつくる】機会と捉え直してみると…「痛みを噛み締めて、苦い味の記憶を今後に活かす」という新たな創造性あふれる考え方へと変貌するのではないかと私は考えております。この点は脳科学的にもとても深い意味を持っていると言われております。以下、更に考察致します。
先ず、脳には「扁桃体」と「海馬(かいば)」が密接に連携する仕組みがあります。扁桃体が感情的な痛みや恐怖を感知し、それを海馬が“経験として記憶化”すると言われております。つまり、強い感情を伴う出来事ほど、脳は長期記憶として深く刻み込む傾向にあります。この「苦い記憶」が、次に似た状況に出会ったとき、前頭前皮質と言われる部分が“反省に基づく判断”を導きます。それがいわゆる「学びの回路」と言われます。この点は…『ふじの花』の過去のブログでも述べているように…失敗や後悔を経た学習の方が、報酬だけを得た学習よりも神経回路の結合が強固になることが知られています。痛みを避けず、真正面から受け止める姿勢こそ、脳を成長させ、次の行動を変える力を生み出すと言われております。
では、謝罪の相手との関係をどう築き直すか。この点を考えられるか?が謝罪という一連の行為のターニングポイントになるのではないかと私は考えています。と言うのも…多くの方が謝罪をしようと一生懸命になればなるほど、自分の行った目の前のことばかりに目がいってしまいがちになりますが、実は…本当に重要なのは…「相手の脳」も同じく扁桃体の防衛反応を起こしているという点ではないかと考えられるからです。相手は「傷つけられた」「軽んじられた」と感じた記憶を持っています。このとき、相手の扁桃体は再びその痛みを思い出し、防衛的になります。だからこそ、関係修復の第一歩は、相手の脳に“安心”を届ける事が大変重要なのです。
そして…それを可能にするのが、「非言語的な誠意」と言われております。即ち…穏やかな声のトーン、視線の高さ、身体の向け方、沈黙の取り方——これらは相手の「ミラーニューロン」と言われる神経細胞に作用し、「この人は私に敵意がない」と感じ取らせる事が知られております。ミラーニューロンは、人の表情や仕草を見て同じ神経活動を自分の中に再現する細胞群で、共感や信頼の基盤をつくります。つまり、言葉よりも先に、“落ち着いた空気”そのものが相手の心を開くと言われております。
また、脳科学的に見ると、「許し」という感情は一瞬で生まれるものではないと言われております。むしろ、前頭前皮質という部分が「相手の変化を繰り返し確認する」過程で、少しずつ危険を感じ取る扁桃体の活動が鎮まり、信頼が再構築されると言われております。
従って…関係修復では「すぐに許してもらう」ことを目的にせず、小さな理解の積み重ねを大切にすることが現実的と言われております。
例えば、
•相手が何を重視していたのかを丁寧に振り返る。
•相手の話に割り込まず、最後まで聞き切る。
•行動で一貫して誠実さを示す。
こうした地道な積み重ねが、脳内の「報酬系」(線条体や側坐核と言われる部分)に働きかけ、相手に「この人といると安心できる」「以前とは違う」というポジティブな感情を形成します。それは、言葉ではなく“誠実な積み重ねという一貫性”によってしか築かれない信頼とも言えるのではないでしょうか?
更に…謝罪の行為は、相手のためだけでなく、自分の脳の成長にも深く関わると言われております。心からの反省は、前頭前皮質の自己制御機能を高め、感情の波に流されにくくなります。そして、他者の感情を想像する「内側前頭前皮質」と言われる部分の働きが強化され、人間関係全体への感受性が豊かになります。このプロセスを経た人は、次に誰かの過ちを見たとき、「責める」よりも「理解しよう」とする傾向が高まると言われております。それは、脳の中で「過去の痛み」が他者理解の資源へと変化した瞬間とも言えるのではないでしょうか?つまり、謝罪の先にある学びとは、“痛みを通して共感の回路を広げる”ことに他ならない事であり、その学びが、自分を成長させ、再び人と深く結ばれる力となるのではないかと私は考えております。
以上のように…
謝罪とは、単なる過去の清算ではなく、未来の関係を育むための神経的再構築とも考えられ、『防衛から共感へ』、『痛みから学びへ』…この過程を経ることで、人は「自分を変える力」と「相手を理解する力」を同時に育てる事に知らず知らずのうちに繋がっているような気が致します。
脳は、他者に向けた真の誠意を決して忘れません。そしてそれを見た相手の脳もまた、ゆっくりとその信号を読み取り始めます。私達が今感じている痛みや後悔は、決して無駄ではありません。
それは、介護現場で見られる多くの失敗や後悔という痛みにも通じるモノがございます。どうか…日頃ご利用者様を必死にお支えになられているご家族もその辛さや痛みを感じながらも、「痛みを噛み締めて、苦い味の記憶を今後に活かす」という新たな創造性あふれる考え方に気付き、その気付きにそっと寄り添えるお心が養われる事を願ってやみません。