皆様、こんにちは。本日は11/18(火)。各種ニュースやSNS上でも次第に各地の紅葉を知らせる足跡が増えてきております。日本人のみならず、様々な国の人々からも…紅葉が深まりゆく季節になると、ふと足を止めて「美しい」と思う瞬間があるようです。11月4日のブログでは、この「美しい」という心の動きに静かに耳を澄ますことが、実は自分の内側にある“課題”と向き合う入口であることを述べました。そしてそれは同時に、介護や支援において最も大切とされる「寄り添う」という行為の本質に通じている事を述べました。私が何故今回その様な事を改めて述べたのか?それは介護の対象は親子関係や夫婦関係及び障がい者とそうでない者との関係など様々ですが、ともすると介護を受ける方々は『私の気持ちを解ってくれない』若しくは『私の気持ちを解って当然なのだ』という言葉を頂戴する事がございますが、介護(支援)をする人々がその様な人々のお気持ちに静かに耳を澄ます事ができているか?疑問に思う事が多々あるからです。
①ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは(古今和歌集)
②散りぬべき 時知りてこそ もみぢ葉は
秋の山辺を 彩づるらめ(新古今和歌集)
今回はその続きを、科学的な検証、特に…脳科学・神経学・ゲノム解析学等の知見を交えながら、様々な疾患──特に糖尿病や慢性疾患を抱える方々が、季節とともにより良く生きるための視点として深めて参りたいと思います。
介護の現場で誤解されがちな「寄り添う」という言葉には、上記で述べた様に…相手の気持ちを完全に理解することだ、という無意識の思い込みがあります。しかし脳科学的に言えば、それは不可能と言われています。私たちの脳は、過去の記憶・経験・遺伝子情報・価値観によって物事を解釈しており、同じ景色を見ても感じることは決して同じではありません。紅葉を見たときに「美しい」と感じる人もいれば、幼い頃の思い出が蘇り涙がこぼれる人、あるいは病気や将来への不安で胸が押し潰されそうになる人もいます。つまり「寄り添う」とは…相手と同じように感じようとすることではなく、相手が“どのように感じているかを尊重し、その響きを聴こうとする姿勢”にあると解釈されます。
また…神経学で言う「ミラーニューロン(共感を司る神経細胞)」は、相手の表情や声の調子を見た瞬間に活性化しますが、これは“模倣”であって“同一化”ではないとされております。即ち…『寄り添い』とは…相手の世界を模倣し、理解しようとする《開かれた態度》の積み重ねにあるとされます。
ここに…糖尿病や心疾患、腎臓病、うつ症状や認知症などを抱える人々がいるとします。それらの人々は…一般的に季節の変化に大きな影響を受けることが知られています。例えば…気温差による交感神経の緊張、日照時間の変化による睡眠ホルモン(メラトニン)の乱れ、冬に向かう不安感による血糖値の変動、更に、寒さによる末梢血管の収縮で血流が弱まる事等数え上げれば切りがありません。特に糖尿病の方は、ストレスホルモン(コルチゾール)と血糖値が密接に連動しているため、季節の移ろいは身体の内側に大きな波をつくります。だからこそ、秋から冬へと向かう時期に紅葉を眺めながら、「美しい」と感じた心の動きを丁寧に拾い上げることは、その波を静かに整えるための大切なステップになるのです。
更に…近年のゲノム解析学では、遺伝子そのものよりも、“遺伝子のスイッチ”を入れたり切ったりする機能(エピゲノム)が私たちの心身に大きな影響を及ぼすことが明らかになっています。この点は『ふじの花』の9/12投稿のブログ(続『思考の柔軟性(エピジェネティクス)』について)でも…別の視点から述べておりますので、興味のある方はご覧になって頂けましたら幸いです。そしてこの遺伝子のスイッチは、光、音、温度のみならず…人間関係、更に、情動(安心・不安)、風景に対する感動等…といった外界の刺激と密接に結びついているとされます。つまり紅葉を見て「美しい」と感じた瞬間、脳内でオキシトシンやセロトニンという物質が分泌され、エピゲノムのスイッチが“安心”の方向に働く事が証明されております。これは糖尿病で乱れやすい自律神経やホルモンバランスにとっても、実に穏やかで有益な働きをもたらします。この点からも『寄り添い』とは…相手が“スイッチを安心側に入れ直す瞬間”を一緒に見守ることでもあると言われております。
病を抱える人にとって、生活のしやすさは薬だけでは作れません。この点は脳科学・神経学の観点からも、次の3つが非常に重要であると示唆されております。
1.「安心のリズム」を季節に合わせて整える
秋から冬へ向かう時期は、
•朝日を5分浴びる
•温かい飲み物で胃腸を温める
•軽い散歩を10分行う
これだけで自律神経の安定に大きく寄与します。糖尿病の方の場合、これらはインスリン抵抗性の改善にもつながり、血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。
2.共感しすぎないことも寄り添いである
相手の痛みをすべて背負い込むと、“共感疲労(エンパス疲労)”が起きると言われております。介護者の脳はストレスによって前頭前野が疲弊し、判断力・忍耐力・感情コントロールが低下してしまいます。この点からも…寄り添いとは….相手を支えるために自分自身の脳を守る行為でもあるとされております。この考え方は元来見過ごされてきた分野かもしれませんが、介護の分野でも『レスパイト』ととして定着しつつある考え方となっております。
•1日10分だけ自分の時間を確保する
•香り・音楽などの「小さな休息」を挟む
•相談できる人を一人つくる
こうした“自分を整える寄り添い”こそが…相手の心を最も穏やかにするとされております。
3.相手の“その日の状態”に合わせて寄り添い方を変える。
糖尿病や慢性疾患の方は、日によって体調も気持ちも変わります。
•血糖値が高い日はイライラしやすい
•むくみが強い日は不安が増す
•眠れない日は注意力が落ちる
こうした変化は、決して“わがまま”ではありません。身体の内部で起きているホルモンや神経の変動が、そのまま情動として表に現れているのです。この点からも…『寄り添い』とは…「今日は少し不安が強いのかな」と状況に寄り添って接することであり、相手の人格を否定しない“まなざし”を持つこととされております。
秋の夕暮れや冬の気配の中で、「美しい」と感じたときの胸の温かさは、脳内で「安心との繋がり」を司る回路が静かに活性化している証です。この瞬間を大切に味わえる人ほど、寄り添う力が自然と磨かれていきます。即ち…人の表情の変化に気づきやすくなったり、相手の「言葉にならない声」が聞こえたり、何をすれば相手が楽になるか直感的に感じとれる事などです。
この点からも…寄り添いとは、特別な技術ではなく、日常の小さな美しさを感じとる心の柔らかさ…から生まれてくるとも言えるのではないでしょうか?
冒頭に挙げた2つの歌詞の意味はそれぞれ…
① は…『竜田川の水が、散った紅葉で真紅に絞り染めにしたように流れていくとは、神々の時代にも聞いたことがありません』と訳される、在原業平の歌です。また、②は… 『散るべき時をちゃんと心得ているからこそ、紅葉はこうして秋の山辺を美しく彩るのだろう』と訳される寂蓮(平安末期〜鎌倉時代初期)の歌です。
紅葉が散り、冬に向かう静かな季節は、寄り添う心が最も深まり、自分自身も整えられていく時期でもあります。遠い日の歌人達もそれぞれは…何の得手不得手もない人に違いありません。そこにあるのは…ただ目の前の情緒豊かな情景に静かに耳を澄ます心得を持っていたに過ぎないのではないでしょうか?しかし…そこには現代人が失いつつある心の有り様があるような気がしてなりません。それは…『自分自身が整えられていく時期』を逃している事にほかならないのではないでしょうか?。その様な自らの課題が介護や支援を行っている方々すべての人の内面に宿ってはおりませんでしょうか?目の前の美しい様々な自然に触れる時に少しでも…その様な課題に目を向ける機会がありましたら…幸いでございます。




