皆様、こんにちは!本日は5/24(土)。各地でジメジメとした地上の暖かい空気と、冷たい空からの空気が重なり合い、竜巻、ダウンバースト、ガストフロント等という自然が作り出す凄まじい災害級の空気の流れで人工物が破壊されて行く事を…ニュースで見るにつけ、私達人間の何とちっぽけな存在であるかを…改めて思い知らされる毎日が続いております。と同時に、改めて日々の何気ない平穏な毎日対して感謝の気持ちが湧いて参ります。
最近、ご利用者様のご家族様から頂いた、言葉の中に『先日脳血管障害の事がブログに載っていましたが、私の母の様な糖尿病かつ腎不全の場合には…日常生活にどんな不具合があるのか?など教えて欲しい。特に薬を飲んでも認知症の症状が様々に出る事に困惑しています』という事を言われました。
その答えを論ずるには…薬の効果だけではなく、薬の副産物である、副作用についても検討しないとなりません。何故なら、薬は治療する為に投与されるモノですが、人のどの様な状態に対して投与され、更に日常生活のどの様な部分にその効果が現れるかは…ADL(日常生活動作)ごとに検討しないとならないからです。特に糖尿病と腎不全の治療は長期にわたることが多く、複数の薬を使うことになります。これらの薬の副作用が加わると、元々の認知症状(失行・失認・失語)をさらに悪化させ、ADL(日常生活動作)に深刻な影響を及ぼします。以下、ADLの主な場面である①歯磨き②着衣③食事④洗濯⑤買物に分けて、考えてみたいと思います。
① 歯磨きについて(注意力・手の動きへの影響)
糖尿病治療薬の中には、低血糖を引き起こす薬(インスリン、スルホニル尿素薬など)があります。低血糖が起きると、ふらつき、手の震え、意識の混濁が生じやすく、歯ブラシをうまく握れない、口に正しく運べないといった失行が悪化します。また、腎不全治療に使われるリン吸着薬や利尿薬などには、脱水や電解質バランスの崩れを引き起こすことがあります。これにより、注意力や集中力が低下し、「今、自分が歯磨きをしている」という認識が弱まり、失認に近い状態になります。さらに、抗糖尿病薬の副作用としての口腔乾燥(ドライマウス)や口内炎の発症は、歯磨きに対する嫌悪感や抵抗感を強め、ケアの継続を困難にします。
② 着衣(体の動きと意欲への影響)
糖尿病薬や腎不全治療薬による副作用として、倦怠感、筋力低下、脱力感が起こることがあります。これらは、着衣という一見簡単な動作に大きな負担を与えます。ボタンをとめる、袖に腕を通す、服を選ぶといった動作が苦痛になり、失行が目立つようになります。また、腎機能が低下していると、薬が体にたまりやすくなり、過鎮静(ぼーっとした状態)やせん妄が起こることもあります。この状態では服の選択や着替えの手順を忘れてしまう失認的な症状が見られます。また、一部の血糖降下薬や降圧薬では、うつ状態や気分の落ち込みが副作用として現れることがあります。これにより「服を着ようとする意欲そのもの」が低下し、着替えが進まなくなることがあります。
③ 食事(味覚・食欲・認識への影響)
糖尿病薬の副作用で最も問題となるのが、やはり低血糖です。食前や食後に服薬のタイミングを誤ると、意識がもうろうとし、目の前の食べ物を認識できない(失認)、あるいは食べ方がわからなくなる(失行)といった状態に陥ることがあります。
さらに、腎不全治療薬では味覚障害や食欲低下が副作用として知られています。これにより、食事そのものへの興味がなくなり、「食べよう」という行動が起こりにくくなります。また、薬の副作用で吐き気や胃の不快感があれば、食事の拒否も起こりえます。また、糖尿病治療で使われるGLP-1受容体作動薬では、食欲を抑制する作用がある反面、消化器症状(吐き気、便秘)が出やすく、それにより認知症の方が食事を嫌がるようになることもあります。
④ 洗濯(動作の流れと疲労感の影響)
洗濯は一連の手順を踏む必要があるため、認知機能が低下した方には難しい動作です。そこに薬の副作用が加わると、さらに難易度が増します。
糖尿病薬や腎不全の利尿薬では、脱水によるふらつきや体力低下がよく見られます。洗濯機に服を入れる、洗剤を量る、ボタンを押すといった動作の一つひとつが億劫になり、失行的な間違い(順序がバラバラ、間違えるなど)が目立ちます。
また、腎不全の治療に使われる一部の薬(特に中枢神経に作用する薬)では、日中の眠気や集中力の低下が起こることがあり、作業に対する注意の持続が困難になります。これにより、「洗濯の途中で別のことをし始める」「そもそも洗濯という行動を思い出せない(失認)」といったこともあります。
⑤ 買物(判断力・行動力への影響)
買物は、認知症の方にとって最も複雑で疲れる日常行動のひとつです。そこに糖尿病や腎不全の治療薬の副作用が加わると、判断力・記憶力・意欲にさまざまな障害が生じます。低血糖によるぼーっとした状態や意識の混乱は、レジでの支払い、商品選び、目的の記憶などに大きく影響します。糖尿病治療薬の中には、高齢者では低血糖の自覚症状が乏しいものもあり、外出中に体調が急変するリスクもあります。腎不全治療薬によって引き起こされる集中力の欠如、眠気、脱力感は、買物中の注意力や行動力を大きく低下させ、転倒や買い間違いの原因になります。また、薬の副作用によるうつ傾向や無気力感は、「外出したくない」「人と関わりたくない」といった気持ちに拍車をかけ、買物行動自体を避けるようになります。
本日は…以上の様に、ご家族様からの疑問に対して、様々な科学的な検証を私なりの視点で述べてみました。過去に、『寄り添う』とは?のブログの回で…大事な事は様々な視点から科学的な検証を加える事が大前提である事を述べました。これからも日頃の皆様からの疑問に対する、1つの考え方として述べて参りたいと思います。
そしてその事が日々辛い介護で、孤独に陥りがちなご家族様や自ら辛い想いをされているご利用者様に対して、少しでも1つの指針として参考にして頂けましたら幸いでございます。