皆様こんにちは!本日は6/2(月)。早いもので、今年も6月になってしまいました。6月の異名として広く知られているのが「水無月(みなづき)」です。ですが…梅雨時で雨の降りやすいにも関わらず、「水が無い」と表すのを不思議に感じたことのある方も多いのではないでしょうか。辞書を紐解くと…水無月の「無」は…「の」にあたる連体助詞「な」であるため、「水の月」という意味になるとの事。今まで水の無かった田んぼに水を注ぎ入れる頃であることから、「水無月」や「水月(みなづき・すいげつ)」「水張月(みずはりづき)」と呼ばれるようになったとの事。この時期の雨は稲が実を結ぶために重要なものであるため、豊作を願う人々の思いがこの呼び名に表れている、ともいわれています。
そんな人々の切実な願いが込められた6月ですが…先日、ご利用者様のご家族様から…『人の体って、本当に不思議ですよね?だって…全ての人は同じ体の構造を持っているのに、どうして人によって認知症になる方がいたり、その症状に差が出たりするのでしょうか?』というご質問がありました。とても鋭い質問であると同時に、考えれば考えるほど、人の体の精密さを感じざるを得ない…そんな気持ちを抱きました。そこで、今回は次回と2回に分けて、その謎についてお話をしてみたいと思います。
第1回目の今回は『人の体の構造を【血液の流れ】を中心に考えて、その【血液の流れ】がどうして、各器官(心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、左右の脳)ごとの役割に応じて、異なる流れ方になるのか?』という事をお話をしてみます。というのも、その点を考える事が…次回の『認知症の各症状の違いにつながるのでは?』と思ったからです。
1. 血液の基本的な役割
血液は以下の4つの主な機能を担っていると言われています:①酸素や栄養の運搬②二酸化炭素や老廃物の回収③ホルモンの運搬④免疫細胞の巡回と体温の調節。これらの役割を果たすために、各臓器では必要な量・速度・タイミング・圧力が異なるため、「血の流れ方」もそれぞれ異なると言われています。
2. 心臓の特徴は…筋肉が非常に厚く、特に左心室は全身に血液を送るため強力である事。一拍ごとに動脈圧のリズムを作る役割がある事。構造としては…左右で「肺循環」と「体循環」を分担している事。
血液の流れは…
①右心房 → 右心室 → 肺動脈(肺へ)
②左心房 → 左心室 → 大動脈(全身へ)
以上のようになっていると言われています。
3. 肺の特徴は…他臓器より血管壁が薄く、毛細血管の網が非常に広い 。何故なら、圧を下げて時間をかけたガス交換を行う必要性があるからです。つまり、血流は「酸素の取り込み」のためにゆっくり・広く行われている言われています。その構造としては…毛細血管が肺胞(ガス交換の場)を取り囲んでおり、血液の流れとしては…心臓から来た二酸化炭素を含む静脈血が、肺で酸素と交換され、再び心臓へ送られている事が知られております。
4. 肝臓の特徴としては…「門脈系」(他の各消化器系器官から別の臓器[肝臓]へ静脈血を直接運ぶ特殊ルートを持つ)という特別な流れがあると同時に、栄養素の加工・解毒・胆汁生成などのため、血液を再処理する仕組みを併せ持っている事が知られております。構造としては…「肝動脈」と「門脈」が合流して肝臓内に入ると言われ、血液の流れとしては…小腸などの消化管から吸収された栄養や毒物を含む血液が「門脈」を通って肝臓へ。その後、「肝静脈」から心臓へ送られている事が知られております。
5. 膵臓の特徴しては…ホルモンを血流に乗せて迅速に届けると同時に、血流がホルモンの分泌量に影響を与える事が知られております。構造としては…外分泌部(消化酵素)と内分泌部(ホルモン:インスリン等)を持つと言われ、血液の流れとしては…血糖値や消化状態に応じて、膵臓の血流はきめ細かく制御されると言われております。つまり消化・血糖制御の“微細な調整”に特化しているのです。そしてインスリン(血糖値が高くなったときに分泌され、血液中の糖を細胞に取り込ませるホルモンであり、膵臓の「ランゲルハンス島β細胞」で作られている事が知られております。例としては…食後、血液中のブドウ糖が多くなったとき、インスリンは血糖を肝臓や筋肉に取り込ませて下げる事等が挙げられます)やグルカゴン(血糖値が低くなったときに分泌され、肝臓に蓄えられた糖を血中に戻すホルモンであり、膵臓の「ランゲルハンス島α細胞」で作られている事が知られております。例としては…空腹時に血糖値が下がると、グルカゴンが肝臓を刺激して、蓄えていた糖[グリコーゲン]を血中へ放出させる等が挙げられます)は門脈(腸や膵臓などの内臓から、血液を肝臓へ直接運ぶ特別な静脈でありますが、通常の静脈と違い、一度心臓を経由せずに、消化後の栄養素やホルモンをすぐに肝臓で処理するための“ショートカット”である事が特徴的と言われております)から肝臓へ送られると言われております。
6. 腎臓の特徴師としては…全身の血液の約1/4が常に流れている事及び、必要なものを再吸収し、不要なものを尿として排出している事。ろ過と再吸収の“精密設計”を行っている事が知られております(血の流れを通して『選別』を行っているのです)。構造としては…ネフロン(腎臓の中にある、様々な器官から流れ着いた血液をろ過し、尿をつくる最小単位」と言われ、1つの腎臓に約100万個ある事が知られております。血液の流れとしては…
・腎動脈 → 糸球体(毛細血管のかたまり(血液をろ過))→ ボーマン嚢 (糸球体を包み込み、ろ過された水分や成分(原尿)を受け止める袋状の構造)→ 尿細管 (ボーマン嚢から続き、水や塩分、必要な成分を再吸収し、不必要なものを尿として濃縮する 事が知られております)→ 腎静脈
以上になっている事が知られております。
7. 脳(左右)の特徴しては…酸素消費量が非常に多く、血流が数秒止まるだけで意識障害になってしまう事、及びウィリス動脈輪という「環状構造」で、片方の動脈が詰まっても他が補えるという特殊な特徴を併せ持つ事が知られております。また、左右の脳では①左脳:言語・論理思考 → 微細で計算された流れ②右脳:空間認知・感性 → 比較的広範囲な血流配分という役割を持っている事も知られております。構造としては…左右の大脳半球 + 小脳 + 脳幹に分かれ、血液の流れとしては…
・頸動脈(内・外)+椎骨動脈 (胸の奥の、鎖骨の下の動脈(鎖骨下動脈)から分かれて、首の骨[頸椎:けいつい]の中を通りながら上へ登っていき、最後は頭の中に入って脳底部に血液を送る太い動脈の事)→ ウィリス動脈輪 → 各部位へ分配されるというルートを通っていると言われております。ここで述べている『ウィルス動脈輪』とは…椎骨動脈は、内頸動脈(ないけいどうみゃく)と協力しながら、脳に血液を送っている事が知られておりますが、脳の中では、これらが「ウィリス動脈輪」という環状のネットワークを作り、もし片方が詰まっても、他のルートで血液が流れるようにできている事が特徴とされています。
8.
以上のように…臓器ごとに異なる流れが必要な理由は…①役割が違うから(肺はガス交換、腎はろ過、肝は加工と解毒、脳は処理センター)。②構造が違うから(心臓はポンプ、腎臓は網目のような濾過機構、脳は環状の保険構造)。③時間・圧力・量が違うから(一瞬の遅れが命取りになる脳や心臓に対して、じっくり処理する肝臓や腎臓)。
このように、それぞれの器官はその機能に応じた「血液の流れ方」を選ばれているのです。血流は「共通のインフラ」であると同時に、臓器の性格を映す鏡でもあるのです。
本日はご家族様からの疑問に寄り添う形で…難しい体の特徴を各器官の特徴と血液の流れ方がそれぞれの器官で異なる理由をお話させて頂きました。
次回は更に突っ込んで、認知症状との関係を述べてみたいと思います。