皆様、こんにちは。本日は11/4(火)。季節は巡り、2025年もいつの間にか11月を過ぎてしまいました。11月は旧暦で、『霜月』と言う説が有力です。旧暦の11月は、現在の12月頃にあたります。野山や田畑に霜が降りる様子から、「霜が降る月」が「霜月」になったとされています。現在では山々の木々が緑から黄色や赤色など…多種多様な色へと変貌を遂げる季節でもあります。私が何故、このような事を話すのかと言うと…それはこの目にも鮮やかな様々な色への変貌こそが生態系の循環、及び生物学…そして、私が仕事として行っている介護で重要とされる『寄り添う』事の本質である心の科学にも触れるものだと考えたからです。
これらの現象は、樹木が冬に備えて行う「代謝の切り替え」であると科学的には説明されます。即ち…光合成の主役である「葉緑素(クロロフィル)」は、春から夏にかけて太陽エネルギーを吸収し、糖分を作り出します。しかし秋になると日照時間が減り、気温も下がるため、光合成の効率が落ちます。そこで木は葉緑素を分解・回収し、次の春に備えて幹や根に栄養を貯蔵します。このとき葉緑素が抜けた葉の中から姿を現すのが、
•カロテノイド(黄色・橙色)
•アントシアニン(赤色)
といった色素です。アントシアニンは光合成による酸化ストレスを防ぐ抗酸化物質としても働きます。つまり、紅葉は樹木が自らの細胞を守るための生化学的防御反応でもあるのです。更に、落葉後、地面に積もった葉は微生物やミミズなどによって分解され、リン・カリウム・マグネシウムなどのミネラルが土壌に還元されます。それらが翌春の新芽や草花の栄養となる…紅葉は、「生命のリレー」の一断面なのです。以上の様に…紅葉が『生態系の循環』の中で見事に大きな役割を果たしている事が…科学的にも証明されているのです。
また、紅葉の色には、生態学(生物学)的にも進化的な意味があると言われております。植物は動物のように逃げられないため、環境変化に「色」で応じることがあります。黄色(カロテノイド)は光エネルギーを調整し、光害から葉を守ります。赤色(アントシアニン)は低温時に葉の光合成機構を保護するほか、昆虫への「警戒色」の役割を果たすという説もあります。一部の研究では、アブラムシなどの害虫は赤色を嫌う傾向があることが確認されており、紅葉は虫害から身を守る“進化的戦略”の可能性があるとの事。また、生物学的には紅葉の進行には日照時間・気温・湿度・土壌のミネラルバランスが密接に関わっており、これらの条件が最適な年ほど、色鮮やかな紅葉が広がるとされます。従って紅葉とは、「その年の森の健康状態を映すバロメーター」とも言えます。人間の健康状態を現すバロメーターがバイタル測定(体温、血圧、脈拍、酸素飽和度)で現されるとするなら、紅葉の1つの健康状態が上記の様な生物学的な視点が掲げられる所以なのです。
では、私達はなぜ紅葉を「美しい」と感じるのでしょうか?脳科学的には、紅葉を見ると視覚野・扁桃体・前頭前野などが同時に活動することが分かっています。
1.視覚野(後頭葉)
赤・黄・橙などの波長の長い光が網膜に届き、視覚情報として認識される。
2.扁桃体(情動の中枢)
暖色系の刺激は「快・安心・懐かしさ」を誘発し、心地よい感情を生む。
3.前頭前野(意味づけ・共感)
「季節の移ろい」「人生の無常」「自然との一体感」などを連想し、“美しい”という感情を意識化する。
つまり紅葉の美は、知覚・感情・意味づけの三重構造によって成立すると言われております。
特に日本人の場合、「紅葉=秋の静けさ・侘び寂び」といった文化的記憶が長年の中で刷り込まれており、脳内の報酬系(ドーパミン分泌)がより強く反応する傾向があります。それが、紅葉を見たときの「ああ、美しい…」という深い感動を生むのです。
以上の様に…紅葉とは、単なる色彩現象ではなく、樹木が次世代へ生命をつなぐための代謝の知恵であり、森全体が循環する生命の営みであり、そしてそれを「美しい」と感じ取る人間の脳の高次な感性の結晶でもあるとされます。生態系は物質を循環させ、生物学はその仕組みを支え、脳科学はその感動を生み出す……この三者が調和するとき、私たちは自然と共鳴し、“生きていることの意味”を静かに感じ取るのではないでしょうか?この事は…ふじの花の10/8投稿のブログ(共鳴するケアのあり方とは?)で…コオロギの鳴き声を科学的に検証する過程でも別の視点から述べております。興味のある方はご覧になって頂けましたら幸いです。
私が好きな古典の中に…『見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮』という歌があります。……新古今和歌集で…藤原定家が詠んだ有名な歌です。ここでは…春を連想される花や、秋を連想される紅葉もないと述べていますが、花や紅葉という言葉をあえて一度使うことによって、まず読者に華やかなイメージをうえつけています。その効果によって、後に続く「浦の苫屋の秋の夕暮」という言葉から受ける寂しさをよりいっそう強く感じさせる効果があるとされます。そこから…伝統的な色彩美を敢えて消し去り、静かさや寂しさの中に感じる趣の方が…大切であると説いているとされます。
もしかしたら…現代に生きる人々にとっては…理解し難い部分もあるかもしれませんね。
しかしながら…これからの時期、皆様も紅葉を見る時に『あ〜美しい』と思う瞬間があると思います。その心の中に映し出される自らの想いに…静かに耳を傾けてみては如何でしょうか?それこそが…自らが抱える課題に真摯に向き合う瞬間でもあり、更に言えば…介護で重要とされる『寄り添う』事の本質に触れる入口になり得るのです。次回はその点に触れてみたいと思います。




